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老朽化した「モテテク」と、自分に自信のない男たち

これからは「フリースタイルダンジョン男子」こそがモテる

NGだらけの「フリースタイルダンジョン男子」

 そんな中、今年に入って熱狂的なヒップホップブームがやってきた。引き金を引いたのはヒップホップ界のレジェンド達が立ち上げたテレビ番組「フリースタイルダンジョン」だ。
 自分を誇り、相手を「言葉(ライム)」で打ちのめす、男達の戦いがそこでは毎週繰り広げられている。
 そこにあるのは「俺は最高だ」ということをどこまで信じられるか?という「自己肯定のバトル」で、まさに「折れるもんなら、折ってみろッ!」の世界なのだ。
 そんな男達はそれぞれ自分の好きな格好をしていて、ハンサムもいるけど、ごついのやムサイのやポッチャリも多く、おっさんも多い。
 そして、どの人も「女に合わせて揃えた」みたいな格好はしていない。かつての「モテ本」ならNGと言われるような要素が満載なのだ。
 そんな彼らが今、圧倒的に支持されている。

 

低スペック人間に希望あるのか?

 90年代のバブル崩壊から始まる、この国の絶望はかれこれ20年近く続いている。
 その間「あの頃は良かった」という懐古ブーム(三丁目の夕日など)、「地元で仲間と生きていこうぜ」という0年代「絆ブーム」などがあり、その危うい(嘘くさい)空気の底には、ひたすらエヴァンゲリオンの「自分に自信のない主人公」シンジ君が抱えた「憂鬱」を共有していた。
「逃げちゃダメだ」といいつつ、女の子に励まされるのを必死に待っている「弱い心」だ。
 そんなメンヘラ少年に、時代は「死んだらダメだ」と、ずっと付き合ってきた。
 しかし、いよいよこの国は全ての解決すべき問題を先送り(肥大化)させたまま、本格的な地獄に突入してしまった。こうなるともう「励まされるのを待っているだけの人間」なんてものにかまっている余裕はない。
「助かりそうなやつから立ち上がれ」という過酷な淘汰の時代が始まったのだ。

「淘汰」と言うと、スペックの低い人間は真っ先にダメになるような印象になるけれど、実はそうではない。
 フリースタイルダンジョンで活躍している人達はかつての勝ち組のような「見た目の良さ」や「収入」があるわけではない。
 逆にマイナスの要素が「武器」になる時代なのだ。
 太ったおっさんのラッパーや、ハゲすぎの芸人が、それ故に「自分を誇る」時、それまでと違う「かっこよさ」が立ち現れるのだ。
「女達が何と言おうが俺は最高」と言える男を作るマニュアルがあるなら、それこそが次の時代に求められる「モテマニュアル」になるのだろう。
 とは言っても、そもそも自分に自信をつけるために必要なのは、果てしない「挑戦と挫折」しかない。
 そんなものにはそもそも「マニュアル」なんか必要はないのだ。

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山田 玲司

やまだ れいじ

マンガ家。1966年東京都生まれ。小学生の頃から手塚治虫に私淑し、20歳でマンガ家デビュー。オタクがモテるまでの道のりを描いた『Bバージン』(小学館)で一気にブレイク。女性のための恋愛コミックエッセイ『モテない女は罪である』(大和書房)や『AM』での恋愛コラム『山田玲司の男子更衣室へようこそ』などを手がける。著名人へのインタビューマンガ『絶望に効くクスリ』シリーズや、『非属の才能』(光文社新書)といった新書でも知られる。どの作品にも、「どこにも属せない感覚」を持った若者たちへのメッセージが込められている。ニコニコチャンネル「山田玲司のヤングサンデー」を毎週水曜日に放送中。 

公式サイト http://yamada-reiji.com/

Twitter:@yamadareiji


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